こんにちは、かばです。
インターネットショッピングと聞くと、今でこそAmazonや楽天市場を思い浮かべることが多いと思います。
私が、ネットを日常的に使うようになった20年前には、楽天市場がかろうじてあったぐらいで、Amazonは当時まだ主流ではありませんでした(というか進出してなかったかも)
今では日本を含む世界を席巻し世界一の小売業として急成長を果たしています。
しかし、Amazonの価値観は誰もが当たり前に持っているということをご存知でしょうか?
私も、中小企業の経営者の端くれとして、その経営戦略や理念を知ってみたいと思いました。
今回は、『amazonの絶対思考 常に、「普通という基準」を作り変える』[扶桑社/星健一(著)]を紹介します。
ブラックボックスだったAmazonに内側から光を当てた
著者プロフィール
Amazonはアメリカ企業だということは誰しもが知っていることですが、いつの間にか日本中に広がっています。
楽天市場と違ってテレビにあまり露出もありませんし、どんな会社かも実は知らない人も多いですよね。
本書の著者である、星健一さんは2008年に中途採用でアマゾンジャパンに入社、ハードライン事業本部、セラーサービス事業本部、アマゾンビジネス事業本部のそれぞれ事業本部長を歴任され2018年に退社されました。
このようにAmazonを中核にいた著者ですが、本書の冒頭、「アマゾンという企業をどのくらいご存知だろう」と問いかけています。
やはりAmazonという企業が、「誰もが使っている会社なのによく分からない」という会社であることを、著者自身も感じておられるようです。
その上でAmazon経営戦略や理念が現代日本の若い経営者の役に立ってほしいという意義を込めて、本書を執筆されたとのことです。
本書概要
まず本書の構成は大まかにみて2つになります。
・上記を達成するために、Amazonがしている徹底した人材育成
Amazonの経営戦略や理念、ビジネスモデルは思った以上にシンプル
Amazonは1995年にアメリカのシアトルでガレージを借りて創業しています。
少しずつ業績を伸ばしていき、2008年には2.45兆円だった売上が、2018年には23.29兆円まで増加、およそ10倍の売上増になっています。
ところが、利益に関しては北米で5.1%、海外では-3.3%の赤字となっており、利益率がとても低いです。
しかし、その理由はAmazonの理念に繋がっています。
Amazonが最も重要とする理念は「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」です。
その目的を達成するために、①徹底的に低価格を実現する、②Amazonに行けば何でも揃う品揃え、という二点を妥協なく追求しています。
しかしこれは裏を返せば、①ほとんど利益が出ない、②年に数個しか売れない商品も揃えておく、というデメリットを包含しています。
それでも、顧客中心主義を貫くために上記二点を実施しているとのことです。
そして、③顧客の利便性のためには利益を捨てて投資を行う、という姿勢も極めています。
日本だけでみても、注文した商品はほとんどの場合で翌日に届きます。
これを実現するためには、物流拠点を日本各地に配備しなければならず、Amazonの膨大な商品群を確保し続けるためにも、その投資コストは莫大となります。
しかし、Amazonは顧客の利便性を追求するために、設備投資をし続けているのです。
Amazonには数え切れないサービスが付帯しているわけですが、その中でも「マーケットプレイス」「AWS(Amazon Web Service)」「Amazonプライム」が高利益率の三大戦略のようです。
・「AWS(Amazon Web Services)」:Amazonにより提供されているクラウドコンピューティングサービスである。
・「Amazonプライム」:Amazonが提供する有料会員プログラム。通常では有料となる「お急ぎ便」が無料で使え、「Amazonプライム・ビデオ」「Amazon Music」など多くのサービスが使用可能。
マーケットプレイス(通称、マケプレ)では、Amazon以外の他社販売店がAmazonの物販システムを利用して商品を販売できますが、利用するためには月々の利用料や出品手数料、販売手数料(8~15%)を支払います。
次に、AWSですが、これはAmazonがクリスマスなどの繁忙期に対応できる高度なサーバー網を、繁忙期以外に遊ばせるのももったいないので他社に貸し出して有効活用しているものですが、利益率25%というAmazonの中でも最も高い利益率を出しています。
そしてAmazonプライムは使っている方も多いと思いますが、主に「お急ぎ便」を無料で使う目的だと思います。しかし、サブスクリプションサービスなので、安定的に収入が見込め、プライム会員は客単価も高い傾向にあるようです。
このように、物販では低利益率または赤字という状態ではあっても、それに付随するサービスで高利益率を出しているので、総合的にAmazonの企業規模は大幅に拡大しているということになります。
Amazonの顧客中心主義を実現するのは、やはり人間だった
Amazonの社員には、顧客中心主義を実現する上で絶対に欠かせない規範があります。
それが「Leadership Principles」(リーダーシップ・プリンシプル)という14項目からなる「原則」です。
2.Ownership:「それは私の仕事ではありません」は禁句
3.Invent and Simplify:常に創造性とシンプルさを求める
4.Are Right, A Lot:多くのことに正しい判断を下す
5.Learn and Be Curious:常に学び、好奇心を持つこと
6.Hire and Develop The Best:最高の採用と人材開発を求む
7.Insist on the Highest Standards:「最高水準」を積み上げろ
8.Think Big:大きな視野で物事を考えろ
9.Bias for Action:ビジネスではスピードが重要
10.Frugality:「経費節減」ではない倹約の精神
11.Earn Trust:真摯で毅然とした賢明なリーダーの規範
12.Dive Deep:「これ、ちゃんと深堀りした?」
13.Have Backbone; Disagree and Commit:経緯をもって異議を唱えること
14.Deliver Result:アマゾニアンは結果を出せ
上記の14項目は、ビジネスのみならずありとあらゆる場面で理想と思われるような指針です。
Amazonも、創業当初は社員の育成を自己責任としていたようですが、これらの原則をもとに社員教育を徹底したことで現在のAmazonの姿があるようです。
それもすべて、顧客中心主義を実現するためのものなのです。
私が印象に残ったのは、2番と7番と10番でした!
果たしてAmazonのビジネスをうちの会社で実行できるのか?
多くの会社で目の当たりにする現実
私は本書を読み進めていくにあたって、著者が求めるように、他企業がこれを実行できるのか?という疑問が思い浮かびました。
経営者は、創業目的こそ個人的なものであれ、事業を続けていく上で従業員や顧客の利益を上げていくことも目的となっていきます。
上記の14項目のうち1つぐらいは、どんな経営者も自分の会社に一度は取り入れようと思ったことがあると思います。
ところが、理想に燃えて実行をしようとしても、従業員がその理想について来られず反発したり、場合によっては退職したりと現実を目の当たりにした経験があるんじゃないでしょうか?
そのうちに、「そんな大それた理想を持たなくても、仕事できているし利益も出ているから、このままの体制でいければいいや」と現状維持という選択肢を選んでしまいます。
ジェフ・ベゾスの危機感
Amazonの創業者ジェフ・ベゾスは、「いつかアマゾンは潰れる」だからこそ「毎日が常に1日目」だと述べたそうです。
これほど大きな企業となったAmazonが潰れることなんてあるのだろうか?と思ってしまいます。
しかし、この危機感にこそがAmazonがここまで急成長し、大企業となった理由があると感じています。
実際、業績が伸びて常に拡大を続けてきたときにこそ最も恐れなければならないのは「慢心」です。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とは、肥後国第九代目平戸藩主、松浦清の言葉として有名ですが、経営においてうまく行っている時にこそ最も警戒しなければなりません。
大切なのは「勝つこと」よりも「負けないこと」です。
負けない戦略 × 他社を凌駕する努力 × 時の運 = 結果としての成功
この中で一番大事なのは、当然「負けない戦略」であることは分かると思います。
戦略が間違っていれば、どれだけ努力をしても結果は出ませんし、それでも運が無ければ、天災や事故などが原因で結果はついてこないのです。
しかし、多くの企業はこの「負けない戦略」作りを怠ると言います。
この「負けない戦略」を作り上げるのは、ひらめきや思いつきではなく地道なローラー作業であり、具体的には調査・分析の作業を徹底的に行うことです。
ジェフ・ベゾスの危機感は、「負けない戦略」を作っていくために「顧客中心主義」を徹底したのだと思います。
すなわち、Amazonは一般消費者を相手としたビジネスが中心であり、その顧客の声が届かなくなった時にAmazonは負け、「潰れる」と危機感を持っているのです。
ジェフ・ベゾスが考えるAmazonの「負けない戦略」は、「顧客中心主義」を軸としてすべての社員が行動することで顧客から最高の支持を得ることなのではないでしょうか。
顧客のいない商売はない
日本はバブル崩壊後、長年の不景気が続いており、その中で栄枯盛衰も多々ありました。
確かに、運がなく倒産に追い込まれた企業もありましたが、ほとんどの場合は顧客を無視した商売をしたことで顧客から見放され、倒産すべくして倒産しています。
・不動産価格が上昇すると踏んで、本業には不要な土地を投機的に購入した
・中国が今後伸びると聞いては中国に進出し、チャイナショックで破綻
いずれも、企業が顧客の声を反映して行った経営戦略ではなく、経営者の思い込みや地道で地味な作業を避けた結果引き起こされたものです。
「負けない戦略」を経営上のすべてのリスク排除と考え、リスクを一切取らない戦略を練ってしまうと、その会社の持ち味や強みを活かせなくなるという弊害はあります。
だからこそ、重要になってくるのが「顧客が望む価値を提供できるか」なのです。
顧客が会社に求めているニーズに最大に応えるよう戦略を練り、その戦略を遂行する上で発生しうるすべてのリスクを排除し、顧客の望む価値を現実に提供、これを継続するということで「負けない会社」を作っていけるのです。
まとめ
今回は、『amazonの絶対思考 常に、「普通という基準」を作り変える』[扶桑社/星健一(著)]の書評と、本書から導き出せる負けない経営戦略について解説しました。
・「顧客中心主義」を貫くために従業員を徹底して教育
・ジェフ・ベゾスが常に持ち続ける危機感
・生き残っている会社は、形は違えど「顧客中心主義」を実践している
・顧客に価値を提供し続ける会社こそ「負けない会社」である
私自身、小さい会社ではありますが経営を行っていく上で「会社の利益」「従業員に還元」という、当然の目標を持って仕事をしてきましたが、それらはあくまで「顧客に望む価値を提供する」ための手段であったことを忘れていたなと感じています。
会社を経営している人だけでなく、サラリーマンにとっての顧客は会社ですし、フリーランスの人も当然顧客はいるわけですから、「常に顧客が望む価値を考え提供する」という価値観は、社会で生きる上で重要なことだと思います。
Amazonという大きな企業にだけ当てはまるのではなく、私たち個人の生き方でも取り入れたい考え方ですね。
ではまた!
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