こんばんは、かばです。
「生活保護」を聞いたことはありますか?
この記事を書いている現在、とあるインフルエンサーがYouTube動画にて以下のような趣旨の動画を公開しました。
それは「生活保護受給者の命は無価値である、ホームレスの命はどうでもいい」というものでした。
当然、この動画をきっかけにこの方は大炎上をしたわけですが、内心はこのように思っている方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は以下のような内容で、生活保護について解説していきます。
- 生活保護とはなにか?
- 生活保護がなぜ国民の権利なのか?
- 生活保護受給者が差別や偏見の目に晒される理由
- 私たちはどのように生活保護を認識すべきか
生活保護とはなにか?
まずは、生活保護とは何か?というところから解説していきます。
分かりやすく言うと、
- 生活に困るほどお金(財産)や収入が無く
- 仕事をするにも病気などの理由で就けない場合に
- 国が生活費などを支給してくれる(返済しなくてよい)
という制度です。
2019年10月時点では日本国内で207万人もの受給者がいることがわかっています。
なぜこのような制度があるのか
私たちは「働かざる者食うべからず」と言われるように、大人であれば働いてお金を貰うのが当然です。
働いてもいないのにお金(しかも税金)を貰うのは不公平だという意見があるのも納得がいきます。
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
引用元:厚生労働省
注目すべきは「健康で文化的な最低限度の生活を保障」という部分です。
これは、憲法25条に保障された「生存権」の条文がそのまま制度の目的となっているのです。
この「生存権」がなぜ存在するのか?
それは、さまざまな理由により収入の格差が生じたとしても、どんな人も人間として生存することは権利として奪われるべきではないという理由です。
そして、この「生存権」を実際の制度として確立したのが生活保護制度となります。
生活保護受給者が差別や偏見に晒される理由
理由としては、生活保護の「不正受給者」が存在するからです。
生活保護を受給するには、「財産がない」「収入がない」「頼れる人がいない」などの要件をクリアしなければいけません。
あくまで生活保護を受給するのは最終手段だということですね。
ところが、これらの要件を実際にはクリアしていないにもかかわらず、財産を隠蔽するなどして要件がクリアされてしまうケースがあります。
また、若くてまだ働ける人が怠けて就職活動をせず、生活保護を受給し続けるというケースもあります。
このような不正受給を行う者がいることで、税金が無駄に支払われてしまっている現実があります。
不正受給をする者はごく一部にすぎませんが、税金から支払われるという悪印象も相まって生活保護受給者に対しての国民感情は悪くなっています。
一部には、生活保護制度そのものを否定する論調も出てきているような状況です。
生活保護を受けることは悪なのか?
今回の差別発言騒動はなぜ起こったか?
本題である、インフルエンサーによるYouTube動画での差別発言に話題を戻します。
彼の意見は極めて不適切かつ偏った意見であるとSNS等で炎上し、私もそのように思います。
しかし、彼の考えは生活保護という制度や、生活保護受給者に対して無知であることで生じる弊害ともいえます。
私も、介護の仕事を始めて間もない頃は、横暴で傲慢な生活保護受給利用者の態度をみては、生活保護受給者へのヘイトを高めていました。
「税金で食ってるクセに偉そうにしやがって…早く死ねばいいのに…」
などと考えることも多々ありました。
しかしながら、生活保護受給者への嫌悪感というのは、先にも述べたような不正受給者や不真面目な生活態度の人たちが目立ちやすいことで引き起こされているに過ぎません。
介護や就労支援などで生活保護受給者と直接やり取りをしない人からすれば、生活保護受給者のイメージはメディアやSNSでしか得られないでしょう。
そこで得た情報は偏ったものであり、生活保護受給者の本当の姿を捉えることはできません。
ところが、「生活保護受給者は貧乏人、貧乏人には近づきたくない、汚そう、臭そう…」というイメージも同様に植え付けられ、積極的に生活保護受給者に関わろうとする人は少数だと思います。
したがって、自身の目で生活保護受給者と関わりを持つことなく、メディアやSNSの情報だけでその是非を断じている人が多いことが、今回の問題のきっかけと考えています。
生活保護を受給することは国民の立派な権利である
生活保護を受けることで差別や偏見の対象となってはいけません。
確かに、現役時代に「宵越しの金は持たない」と言って、貯金もせず使い切ってしまう生活をしていた人が生活保護を受けるというケースも多くあります。
しかし、生活保護受給者のほとんどは、現役時代も真面目に働き、真面目に節約をして貯金をし、将来に備えて人生の大半を送ってきています。
私の知っている範囲でも、「詐欺で資産のほとんどを失った」「妻に財産をすべて奪われ離婚された」「親の借金を返すために数億稼いだものの自分のために貯金できなかった」など、無知や境遇によって財産を失ったケースが多くあります。
また、身体障害や知的障害等により、まともに就労ができず常に最低賃金によるパート・アルバイトを転々とし、生活保護を受けざるを得ない場合もあります。障害の場合は、障害者年金を受給することが可能なのですが、そのような情報を仕入れる手段も持たない人も多くいます。
その他にも、病気や事故で家計を支える夫に先立たれ、幼い子と母子家庭になってしまったお母さんもたくさんいます。
彼らが本当に差別や偏見の対象となるような怠惰な人間でしょうか?
「生活保護受給者」といってカテゴライズできないほどに、人生や社会は複雑なものです。
不運や不幸によってそれまでの人生が大きく狂い、生活の糧を得られない人は日本にまだまだたくさんいます。
そのような人が差別や偏見を恐れ、生活保護を受給しない道を選んだところで最低限の生活もできないでしょう。
今回の差別発言は、そのような人たちの救われたかもしれない人生を壊すほどの残酷なものです。
生活保護を受給することは国民の立派な権利です。
ためらわず、自分や大切な誰かを守るために積極的に受給してほしいと思います。
私も、炎上した彼と同様、母親を幼い頃に亡くしています。
娘を持つ父親になって今思うことは、仮に私が彼のように傲慢な発言をしたとしたら、発言内容の是非はともかく「人に優しくできなくなってしまった子」と知って、母はすごく悲しむだろうなということです。
私も、娘にはどんな人生を歩んでもいいけれど、苦しんだり悲しんだりしている人に対して差別をするような人にはなってほしくないと願っています。
生活保護は「申請」をすること!(アドバイス)
よく役所の相談窓口にいって「相談したら『もうちょっと様子をみましょう』と言われて帰された」という言葉を耳にします。
生活保護は「相談」をしてはいけません!「申請」をしてください!
実は「相談」は「単に話を聞いてアドバイスをする」というものに過ぎず、審査にも入ってくれないケースがほとんどです。
しかし「申請」であれば役所はただちに審査をして判断をしなければならなくなります。
これは行政手続法に規定されていますので、申請をしたのに帰されたとなれば即違法となります。
必要な書類一式を揃えたら「生活保護の『申請』をしに来ました」と伝えましょう。
まとめ
今回の騒動を受けて、私の考えを書いてみましたが少しでも皆さんの考えるキッカケになれば嬉しいです。
日本ではまだまだ戦後の苦境のまま現代まで生きている方も多くいらっしゃいます。
私たちが思っているほど、物事は単純ではありませんし、この問題も根深いでしょう。
しかし、一人ひとりがこの問題に「誰かの意見のトレース」ではなく、自分の考えを持っていくことが解決の鍵になっていくんだと思います。
ではまた!
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