こんにちは、かばです。
車を運転する方なら、一度は必ず経験をしたことがあるのが、歩行者の飛び出しですよね。
交通ルールを守らない歩行者や自転車の心理は、
- 車が避けてくれる
- ぶつかっても大きな事故にはならない
- 交通弱者だから事故になっても悪くない
ではないでしょうか?
しかし、実際は歩行者や自転車でも自己の責任に問われる場合があります。
今回は、以下の点を解説していきます。
- そもそも交通弱者とは?
- 歩行者や自転車が守らないといけない交通ルールについて
- 歩行者や自転車が車より責任が重くなったケース
- 身勝手な交通弱者を法律は守ってくれない話
交通弱者とは?
子供や高齢者など、歩行していて交通事故に遭いやすい人のことを指す。この場合、自動車やバイクが一方的な「強者」かつ加害者でもあるが、上記のように自転車が安心して通行できる走行レーンがきわめて不備(それどころか歩道すらない場合も珍しくない)な日本の都市では、状況によっては自転車ですら歩行者に対する加害者になりうるため、気配りが求められる。自動車運転者には、こうした交通弱者に配慮した運転が義務づけられており、歩行者をはじめとする交通弱者は法により厳に保護されている。
引用:Wikipedia
都市部の下町などでは、歩道が整備されていない路地がたくさんありますし、数メートルしかないような横断歩道も数え切れません。
「これぐらいなら大丈夫だろう」と、信号無視や車道へのはみ出し通行をする危険な歩行者や自転車はよく見られますが、事故が発生した場合に大部分の責任を負うのは車やバイクです。
ちなみに、車と歩行者の事故の場合の過失(責任)の割合は、以下の通りです。
道路交通法は歩行者にも適用がある
まずは、歩行者が守らなければならない法律があるというところから始めていきましょう。
聞いたことがあるかとは思いますが、道路交通法という法律に歩行者が守らなければならないルールが規定されています。
(道路交通法)
- 信号に従う(7条)
- 歩道がない道路では右側通行(10条1項)
- 歩道を通行する(10条2項)
- 横断歩道を渡る(12条1項)
- 斜め横断禁止(12条2項)
- 泥酔歩行の禁止(76条4項)

なんか当たり前のことばかりね
これらのルールは、罰則規定が設けられているので違反をすると、逮捕・起訴となります。
本来であれば、そういう手続きになってくるわけですが、日常茶飯事に行われてしまっている違反ですし、事故が起きているわけでもなく、程度も軽微なので実際は捕まらないというだけですね。
ただ、「捕まらないからやっていい」ではなく「捕まらないにしても違法行為であること」であることは覚えておきましょう。
現に、これらのルールに違反したことで、交通事故が発生して死傷者が出てしまった場合には、本当に捕まりますので気をつけなければいけません。
それでは、実際に起こった「歩行者が原因で発生した交通事故」について、事例を見ていきましょう。
実際に起こった事故事例
平成31年1月の静岡県
事例:静岡の交差点で歩行者とバイクが衝突、バイク運転手が転倒して死亡、歩行者も重傷の大怪我を負いました。
原因は、酒に酔った歩行者が信号無視をしたことが原因でした。
当初は、バイクの運転手が引き起こした事故として、加害者死亡のまま書類送検されましたが、警察が目撃者や現場の状況を確認していく中で、事故を引き起こしたのは歩行者の方だったことが判明しました。結果:この歩行者は入院していましたが、退院と同時に重過失致死罪で書類送検となりました。

歩行者の酒酔い信号無視が原因です
平成30年11月福岡県
事例:福岡で信号を無視して道路を横断した歩行者とバイクが接触、バイク運転手が重傷を負いました。
結果:上の静岡県の事件と同様、歩行者が重過失傷害で書類送検となっています。

これも信号無視した歩行者がひかれた事案です
平成29年12月判決新潟県
事例:歩行者の女性は、片側三車線の幅30メートル道路を夜間に横断していたところ、横断中に直進してきた車と衝突しました。
女性は、街灯もなく街路樹が並ぶ中央分離帯から道路に進入して、この車と衝突したということです。
歩行者は約2年間の治療と1436万円の治療費がかかり、その治療費を巡って車の運転手との示談交渉が進められていました。
運転手側は、「そもそも夜間の中央分離帯から歩行者が道路に進入してくることなど予測不可能」ということで、運転手の過失を否定する主張をしたわけです。結果:裁判所は、運転手の過失をすべて否定し、運転手に損害賠償責任はないと判断しています(運転手:歩行者=0:100)

夜に突然中央分離帯から女性が飛び出して来るとかホラーですよね
事故が発生したときに適用される法律を整理
自動車やバイクを処罰する規定→自動車運転処罰法
車を運転している最中に生じた事故に関しては、自動車運転処罰法という法律の、自動車運転過失致死傷という条文が適用されることが多いです。
(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
この規定は、よそ見運転や不注視のように普通の事故の場合に、運転手に適用されます。
歩行者や自転車を処罰する規定→刑法のみ(特別の法律はない)
歩行者の法律違反によって死傷事故が生じた場合には、このような直接適用される法律が存在しません。
道路交通法上の法律が適用されますが、うっかり車道に飛び出したり、よそ見歩行をして他の歩行者と衝突しても自動車運転処罰法のような特別の法律による処罰はありません。
ただし、刑法の適用はあるので、よそ見走りをしてうっかり道の角で子どもを突き飛ばした場合には、過失傷害罪の適用があります。
「信頼の原則」はルールを守る人の味方!
刑法上の原理に「信頼の原則」というものがあります。
信頼の原則(しんらいのげんそく)とは、刑法上の注意義務に関する法理論のひとつで、被害者または第三者が適切な行動を行うことを信頼できる場合、それによって生じた損害について、行為者は一切の責任を取る必要はない、という原則のことである。
簡単に言うと、ルールを守ったのにルールを守らない人のせいで事故が発生してしまった場合には、ルールを守った人には責任を問わないというものです。そもそも、ルールを守ることが前提で社会は回っているわけですから、ルールを守らない人への配慮はする必要がないわけです。
実際の最高裁判例でも、
「車両の運転者は、互に他の運転者が交通法規に従つて適切な行動に出るであろうことを信頼して運転すべきものであり、そのような信頼がなければ、一時といえども安心して運転をすることはできないものである。そして、すべての運転者が、交通法規に従つて適切な行動に出るとともに、そのことを互に信頼し合って運転することになれば、事故の発生が未然に防止され、車両等の高速度交通機関の効用が十分に発揮されるに至るものと考えられる。したがつて、車両の運転者の注意義務を考えるに当つては、この点を十分配慮しなければならないわけである。」(昭和42年10月13日最高裁判所第二小法廷刑集 第21巻8号1097頁)
としています。
そして信頼の原則は、交通事故の当事者が車同士である場合だけでなく、車vs歩行者のときにも適用することができます。
自転車が被害者となった事例ですが、
東京地裁 平成22年5月26日判決
国道の変形交差点で、自転車と乗用車とが出合い頭衝突し、自転車運転者が死亡した事案。
対面信号黄色で交差点に進入した乗用車でも、交差道路を走行する車両が赤信号で交差点内に進入してくることはないと信頼して走行するのが通常であるとして、自転車運転者の過失を70%とした。
と判断しており、相手が自転車の場合に、信号無視をした自転車の過失が7割であるとしました。
私がこの事例を読んで「ほぉ!」と思った部分は、車は黄色信号で交差点に入っている(本来はギリギリアウト)のですが、その場合でも横断歩道がまだ青になっていないのであれば信頼の原則が認められるのです。
車側も、黄色信号で交差点に入っていて、ルールを守ったのかどうか怪しい中でも信頼の原則が認められるというのが注目すべき点です。
歩行者や自転車も逮捕・起訴されます
交通ルールを無視する歩行者や自転車の心理は、
- 歩行者(自転車)だから事故ったら車が悪い
- 車道を通行しても車が避けてくれるはず
- 信号無視しても事故らなければ大丈夫
という、身勝手かつ誤った認識です。
歩行者や自転車でも、道路交通法に違反するなどの形で、車の走行を妨げたり事故を誘発させた場合には、刑法が適用されます。なぜなら、刑法というのは以下の流れで適用されるからです。
- 何かしらの事件・事故が発生する
- その事件・事故と因果関係のある事実を捜査する
- その事実を起こした人が被疑者として立件される
原因が歩行者の信号無視、それを避けようとして横転したトラックの運転手が死亡、この場合には、相手が大型トレーラーだろうが戦車だろうが、信号無視をした歩行者が原因で事故が発生している以上、歩行者に責任が問われるわけです。
適用される罪は、刑法209条過失傷害、または刑法210条過失致死となります。
これらは立派な犯罪ですので、逮捕・勾留の後に起訴されます。
有罪の場合には前科も付くことになります。
まとめ
今回は、交通弱者と呼ばれる歩行者や自転車でも、場合によっては車やバイクを相手とする事故について責任を負うということを解説しました。
具体的には、
- 歩行者や自転車も道路交通法を守らないといけない
- 道路交通法を守らず車やバイクの走行を妨害した場合には逮捕・起訴されることもある
- 交通ルールを守らない歩行者や自転車には、法律は味方をしてくれない(信頼の原則)
ということになります。
交通ルールを守らずに事故を誘発した場合には、自分がケガをしていたとしても多額の損害賠償義務を負うこともあります。
「自分は交通弱者だから」と、交通ルールを守らずに事故を起こしたときには、すでに取り返しのつかないことになってしまいます。
交通ルールを守ることは当然ですが、事故が起きてしまえば当事者どちらにとっても不幸な結果しかありません。
事故が起きないよう、普段から交通ルールは守っていきましょう!
ではまた!
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